こんにちは
税理士の枡塚です。
本日は、相続税申告を「早く申告しすぎた」場合の失敗事例を共有したいと思います。
「早く申告するのにどんな問題があるの?」「早く申告できる方が良いに決まっている」と
誰もが考えると思いますが、一概にそうではないという事例です。
例を使って、具体的にお話をしていきます。
※一部実際の事例とは、変更しています。
お亡くなりになった日は、2020年1月10日でした。
お亡くなりになられた方は、不動産を所有していませんでした。
ご相続人の皆様は資料のご収集も非常に協力的で、すぐに必要な資料が収集できました。
また、遺産分割もスムーズに決まり、2020年の5月末には、申告書の作成が完了し、
後は、申告書にご捺印を頂戴して、税務署に提出すれば完了というところでした。
6月初旬のある日、ご相続人の方から、
「亡くなった人の住民税の納付通知書が届いたけど、これは支払う必要があるの?」と
ご連絡を頂戴しました。
何が問題だったか、ご理解頂けましたでしょうか?
住民税の納税義務は、その年1月1日に市区町村に住所がある人ですので、
今回、1月10日に亡くなられた方には、住民税の納税義務があります。
そのため、お亡くなりになってから届いた納付通知書を基に、
相続人の方が代わりにお支払いをする必要があります。
その代わりに支払いをした住民税は、
相続税の計算上、「債務」として計上することができます。
本来であれば、お亡くなりになった方が支払いをすべきものを
”代わり”に支払いをしたにすぎないからです。
今回、「早く申告をしすぎた」ばっかりに、この住民税を債務として計上しないで、申告をするところでした。
今回のケースでは、債務の計上漏れが生じる場合でしたが、
この「早く申告しすぎた」場合には、財産の計上漏れも生じる可能性があります。
例えば、社会保険料関係(後期高齢者医療保険料や介護保険料など)の還付金です。
ご生前に支払ったものが、お亡くなりになったことにより、払い過ぎが生じ、返還される場合があります。
これもお亡くなりになってから、1~2か月後に通知されることが一般的ですので、
「早く申告しすぎた」場合には、計上が漏れてしまう可能性があります。
もちろん、ご相続人の皆様の負担を早く解消するという意味で、早く申告をすることは良いことですが、
計上漏れが生じ、申告書の提出し直しで、余計な負担をかけないように気を付けなければいけませんね。
ちなみに、今回のケースは、申告書を提出する前に、計上漏れが発覚した場合でしたが、
もしも、提出した後に計上漏れが生じたケースでも、
期限内であれば、「訂正申告」として何度でも申告書を提出し直すことが可能です。
また、今回は、お亡くなりになった方が、不動産を所有していませんでした。
不動産を所有していた場合には、その年の路線価が公表されるのを待ちますので、
「早く申告をしすぎた」場合のミスは防止できるかもしれません。
そのため、上半期にご相続が発生し、不動産を所有していない方はより一層注意が必要ですね(;^ω^)
皆様の相続税申告業務のお役に立てれば幸いです(^^♪
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